<浦島太郎の残し文>

銭湯あれこれ(青光より抜粋)3

清湯は、桶に受ける

湯に入るまえには、きよめ湯と申しましてな・・・、体を上から下まで、キレイに洗い流しましてな・・・、
 汗や油でよごれた体を、キレイにしてから、湯に入ることになってましてな、
 この頃、見ておりますと、きよめ湯のつもりなんでしょうがな、いきなり湯舟に、オケをつっこんでな、ザーザー、かける方や、もっと、乱暴なのはですな、タオルを湯舟につけましてな、それで、体をゴシゴシ、洗い流して、飛び込まれる方が、ございますようで・・・。
 きよめ湯というものは、やはり、蛇口から出る湯を、いったん、オケに受けてから、それで体を流すものでございましてな・・・。

湯船の縁に腰かけない

それから、湯に、つかっておりますと、だんだん暖かくなって参りましてな、気持ちが良くなりますのでな、どうかすると、湯船のへりをですな、腰かけと、かん違いをする人が、いらっしゃいましてな、湯のなかに足をつっこみましてな、二、三人が、湯船のふちに、腰をおろしましてな、雑談などをしていらっしゃる光景をですな、最近、よく見かけますが、ああいうことはですな、江戸ッ子は、腰が抜けても、するじゃない、と言われておりましてな、キマリの一つになっておりましたようで・・・。
 ことに、小さい女のお子さんなどはな、ああいうところに、腰かけますとな、婦人病のバイキンなどがな、飛び込みましてな、思わぬ、おそろしい病気にかかったりしますのでな・・・、戦前は、保健所などでも、やかましく、おふれを出しておられたようでございますが・・・。
 とにかく、江戸の銭湯では、湯船のへりには、腰かけないことになっておりましてな、むかしは、腰をおろしている人がおりますとな、ヨソ者といって、軽蔑(けいべつ)をした人が、おりましてなダレでも、軽蔑されるのは、心もちが悪いもので、それで、お互いに気をつけ合いましてな、
 明治のはじめ頃には、江戸の湯船に、腰かけるような人は、一人もいなくなったと、ものの本に出ておるようでございましてな・・。
 銭湯は、江戸にかぎると言われるほどキレイになっていたようでございますが、どうも、戦争からこっちはですな、それが、ですな、残念ながら、あまり、パッとしませんようで・・・。

☆  ☆ ☆

 さて、銭湯という所は、裸になる所でして、あそこには、身分の上下や衣装の良し悪しでなく、文字どおり、裸のつきあいのできる所でして、おまけに、あったまって、人間のキジがむき出しになりますのでな、人を見るには、こんないい場所はないというわけでしてな・・・、むかしは、みんな銭湯で、ムコさがしをしたようございましてな、”銭湯で、みたてた婿に、はずれなし” と言われていたと聞きますが、これなど、今後のご参考になさっては、と思いましてな。
 ではあとが、よろしいようで・・・。

HOME